更新日:令和4年12月11日|山頂まで3時間半くらい|体力★★★★☆・展望★★★☆☆・静けさ★★★★☆・技術★★★☆☆・危険度★★★☆☆・中級者向け|高山植物の女王・コマクサにも出会え、沢山の高山植物を愉しめ、ガスに覆われた蛙岩やニョッキリ岩塔なども拝めて、ライチョウの卵殻までお目にかかれる山旅となっております。
◆都道府県:長野県(北アルプス){二百名山}
◆登山日:2007年7月22日
◆同行者:田中さん
体調の整った夜明けの一時間前に起床して外に出て見ると、
満点の星空で高瀬川を隔てた先には、烏帽子岳や三ッ岳が幻想的に望めた。
朝食後、外は今朝がたとはうって変わり、
朝霧が辺り一面覆い尽くし、乳白色に包まれた心変わりした山上の天気だ。
しばらく待っていると、そよ風が吹き出したので、いよいよ表銀座縦走路を大天井岳に向かう。
爽やかな大気を吸いながら歩を進めた。
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コマクサで彩られた緩やかな天上尾根をしばらく行くと、
ところどころにハイマツの低木のある先にガスに煙る巨大な蛙岩が突き立っていた。
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蛙岩は高瀬川渓谷の墳湯丘から何度も仰ぎ見た岩塔だ。
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深い谷の高瀬川渓谷に思いを馳せ、この山稜を歩くのはまたとない喜びに浸り軽やかに歩を進めた。
踏み込まないように良く整備された稜線を右肩または左肩を下って、
梯子にすがって大下りを下に降りた窪地には、小さなお花畑があった。
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ハクサンチドリ・クロトウヒレン・イワヒゲ・イワオウギなどを鑑賞しながら進み、
大下りの頭にもイワツメクサやミヤマダイコンソウ・ミヤマキンバイ・ゴゼンタチバナが咲き誇っていてこの上ない喜びだ。
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為右衛門吊岩を過ぎるころ、足元にはオオイワカガミ・ミネザクラ・コバイケソウ等が咲き、
ガスっていて眺望は利かない分、花々が結構楽しませてくれる。二頭は追えないものだと思う。
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やがて西からの風が通り抜ける、短い鎖場を下ると切通岩で、
南中川谷には雪渓から冷気が通り抜け汗もひける。
辺りにはミアマカラマツ・ニッコウキスゲ・ツガザクラ・チングルマ・シナノオトギリ・ミネズオウなどが咲いていてくれた。
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ここから登り返して上った処が表銀座縦走路の分岐となり、タカネスミレやヨツバシオガマが咲き花の名山でもある。
この縦走路を開拓した小林喜作のレリーフをカメラに収め、ここから縦走路と分れ直角に左折して、
今日の難関である高度差あと300mの急勾配で一気に突き上げている。
岩屑の歩き難いガレ路に顎を出しながら一目散に登り切り、大天井岳の肩にある大天荘についた。
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やがてガスも抜け去り青空が見えて来た。大天荘近くの砂礫地にコマクサの群生地、
裏の雪田脇にはツマトリソウやコイワカガミの群落、
そしてタカネヤズハハコ・ミヤマキンバイが出迎えてくれた。
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大天荘にザックを預け空身で縦走路上の最高峰の大天井岳に立った。
広々としたゴロ石の山頂には山名標識と三角点標石それに小さな祠があった。
このルートの最高峰だけあって360度の展望は見事なもので、晴上った事に感謝して眺望を楽しみ二頭を得た。
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先ほど辿ってきた長丁場の尾根筋には高瀬渓谷から涌いたガスが舞い上がり、
山肌に纏わりついたり、かすめたりする光景が展開していて登った者に忘れ得ない印象を与えてくれた。
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西側には槍ヶ岳への最も危険度の高い北鎌尾根が鋭い稜線を引いて、
加藤文太郎や松濤明(まつなみあきら)を飲み込んだ尾根が牙を剝き出していた。
喜作新道のヒュッテ西岳の先の東鎌尾根上には縦走者の姿も認められた。
四方を一周望遠すれば浅間山から御嶽山に至る百名山の内二十五山ほどが眺望でき、
地図を広げ遠くの山々と交互に見やり、三座同定にいつまでもふけり飽きない山頂を後にした。
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山頂直下にはハクサンシャクナゲ・クロマメノキ・イワウメ・ミヤマキンバイ・コメバツガザクラなど群落して静かに咲いていた。
ハイマツ帯の中にライチョウの卵の抜け殻があり、ひな鳥を探したが見当たらなかった。
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大天荘前の広場に戻り、ベンチに腰を降ろして休憩していると、
登山者とは思えない身なりの人が、「山はこれに限る」と焼酎を持って隣に腰かけた。
聞くところに依ると、単独で縦走しているとの事。
普段はチラシを1日に2000軒ほど各家庭に歩いて配り鍛えている横浜の人だった。
大天荘に入り受付を済ませ、用足しにトイレに入る。
便器に穴が二つあり「便尿分離式トイレ」だった。使用料は小が100円、大が200円である。
それは屎尿(しにょう)を下界にヘリコプターで輸送する運賃であると書かれていた。
ここの経営は昨夜投宿した燕山荘と同系列である。ここでも窓際の二段ベッドの上段を確保できた。
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